2018年10月10日掲載
アローハ! フリーランスライターの森谷です。今回のハワイ便りは、ハワイ州の日焼け止めの規制法についての話題をお届けします。
今年7月3日、ハワイ州のデービッド・イゲ知事は、サンゴ礁に悪影響を及ぼす成分を含んでいるとされる日焼け止めの販売・流通を禁止する法案に署名しました。施行は、2021年1月1日から。世界初となる日焼け止めの規制法は、日本でもニュースになりました。
販売禁止の対象となるのは、サンゴ礁の白化現象や遺伝子損傷の原因になっていると一部の研究者が指摘している紫外線吸収剤の「オキシベンゾン(Oxybenzone)」と「オクチノキサート (Octinoxate)」を含む日焼け止めです。オクチノキサートはメトキシケイヒ酸エチルヘキシルという名称で、日本で販売されている日焼け止めにも広く使われています。
ハワイ州ではこれまでも、環境保護のためにさまざまな対策が取られてきました。そのひとつが、このハナウマ湾です。ハワイ語で「曲がった砂浜(uma)の湾(hana)」という名前を持つハナウマ湾は、火山の噴火口に海水が侵食してできた入り江で、青く澄んだ遠浅の海にはサンゴ礁が広がり、カラフルな熱帯魚が泳ぐ、ハワイで最初の海洋生物保護区です。
わたしが初めて訪れた1988年のハナウマ湾は、きれいな熱帯魚と一緒に泳げることで人気の海洋公園でした。しかし、ゴミを捨てていく人、サンゴに触れる人、サンゴの上に立つ人などマナーを守らない人が増え、ビーチが荒れてしまった時期がありました。
そのため、ハナウマ湾では美しい海とサンゴ礁を守るための取り組みを開始。まず1995年から観光客に入園料を課します。さらに2002年からは、初めて入園する訪問者に対して環境保護に関するビデオ鑑賞が義務づけました。ほかにも、水溶性の日焼け止めの使用禁止、魚の餌付けや砂・サンゴなどの持ち出し禁止、サンゴの上に立たない・歩かないなどの禁止事項も設けました。このような努力の結果、ハナウマ湾は本来の美しさを取り戻し、アメリカ全土を対象とした美しいビーチを選ぶランキングでも高評価を得るほどになったのです。
このほかにもハワイ州ではここ数年、サンゴ礁や海洋生物に危害を及ぼす海洋プラスチックゴミの削減に力を入れています。ストローはプラスチック製から紙製になり、2020年には、スーパーマーケットのレジ袋の完全廃止を予定しています。
ちなみに今回の法案の中では、わたしたち旅行者に対する日焼け止めの持ち込みや使用についての言及はされていません。しかし、ハワイの海やサンゴ礁がいつまでも美しくあるように、わたしたちも環境にほんの少しでも配慮したいものですね。