2019年8月8日掲載
アロハ! ハワイ在住のライター、酒井美奈です。今回の「ハワイ便り」は、オアフ島のモアナルア・ガーデンからお届けします。
モアナルア・ガーデンには「日立の樹」がぽつんと1本だけそびえているわけではありません。実は同じ種類の木が何本も並んでいて、そのうちの1本が「日立の樹」と呼ばれているのですが、そのことに驚かれる方も多いようです。「日立の樹」は中南米原産のモンキーポッドというマメ科の木で、現在ではハワイをはじめフロリダや東南アジアなど広い地域で見られます。
モンキーポッドが初めてハワイにやってきたのは、今から約170年前の1847年のことでした。まだカメハメハ王朝の時代で、宣教師など外国人が来るようになり、島の歴史が変わり始めていたころの話です。中南米からビジネスでやって来た人が持ち込んだたった2粒の種。ひとつはカウアイ島に、もうひとつはオアフ島のダウンタウンに植えられたそうです。
モンキーポッドは熱帯の気候とよく合いました。1年に約1メートルも伸びるといわれるように成長が早く、横に大きく広がった枝で心地よい木陰を作ってくれることから、公園などに多く植えられ、ハワイの日常生活にしっかりと根付いたのです。今では「ハワイを代表する木」として、さまざまな場所で見かけるようになりました。
「日立の樹」は樹齢約130年だといわれていますから、誕生したのは1890年ごろのことです。それは王家の避暑地でありカメハメハ5世の別荘があるモアナルア・ガーデンが、王家と親交のあったサミュエル・デーモン氏に譲られた時期でもありました。デーモン氏は公園内に世界中の文化やさまざまな植物を採り入れることで、誰からも愛される場所にしようと考えたそうです。
その中でも特に幹や枝の広がりのバランスがよく、堂々とひときわ美しい姿をした1本のモンキーポッドが「日立の樹」として選ばれたのは1975年のことでした。以来多くの人に愛され続けた「日立の樹」は、2010年にその歴史的・文化的価値や美的価値など7つの価値を認められ、ハワイ州の「Exceptional Tree(特別な木)」にも認定されています。